青い花
「はい、パロスポロスの花だよ」
アンガスさんからドサリドサリ島原産の色鮮やかで豪華な花が差し出される。
「あれ?『ドサリドサリ諸島』は外国人を嫌っている閉鎖的な島なのに、よく交流を持てましたね」
「お、よく気が付いたね。実は先代がね…」
温室で作業をしながらエルネアの交易、外交について弁舌を振るうアンガスさん。
(勉強してるんだな、さすが王子…)
私のような旅人に国の成り立ちを説明しているその様子は、ふだん女性たちに愛想を振りまいている一面とは違って──
気が付けば作業の手が止まっていて、アンガスさんが私の視線に気が付く。
「何?じっと見て。惚れた?」
そうね『かっこいい』だなんて一瞬でも思ったのは気のせいよ。
「いえ」
「否定、早っ!
そういえば、チヤはドサリドサリに行ったことある?」
「はい。ただあの国民性は外国人嫌いですから、居心地悪くて滞在は数日ですが」
「そっか。エルネアはどう?」
「ご飯は美味しくて過ごしやすいですね」
「ううん、人はどう?」
「僭越ながらアンガスさんをはじめ、王家の方としか話してませんので一概には…」
「それでもいい、好きか嫌いかで教えて」
私をからかっているのだろうか。オスキツ王、ヴィクトリア王妃、ティムさん、アンテルムさんも皆、優しくて好きに決まっている。
「…好きです」
「おお!!愛の告白みたいだね。あとは笑ってくれれば完璧なんだけどな」
アンガスさんが満足気な笑顔でこちらを見ている。
(ハメられた…)
「さてと、温室の仕事はこれくらいにして休憩にしようか」
すっと差し出された手をとって、私は立ち上がる。 こういうことを自然にするから女性は誤解するんだろうな…。