【アンテルム視点】裏切りと加虐心
【アンテルム視点】
「ウィアラさん、二人分の代金を置いていく。ごちそうさま」
「部屋に空きがあるから泊まらせてもいいけど」
酔いつぶれた少年の背中をさするウィアラさん。
「引越すために荷物をまとめてるそうだから、このまま噴水通りの家につれていくよ」
*
私は、ポムの火酒で酔いつぶれた少年を背負って噴水通りの家に運んだ。
「チヤ君…大丈夫か?」
そっとベッドに寝かせると少年の口がひらいた。
「うーん…くるしいよぉ…」
呂律の回らない、なんとも弱弱しい…これじゃ少年というより女の子じゃないか。
──『女』
いつかの神殿で見た『少年』ではない顔を思い出し、息をのんだ。
「チヤ君、くるしいなら楽な格好にさせるぞ」
わざわざ声にだすのも、これからする行為の言い訳のような気もした。
そっと旅人の服に手をかける。
胸元に触れた時点で柔らかな感触があった。
ひとつひとつボタンを外していくと胸をぐっと押さえつけた下着があらわになる。
(なぜ…この女は我々を騙しているんだ?)
ただならぬ理由があるかもしれないが、王や騎士である自分を欺いてこの国にいることに憤りを感じる。
「エルネアの人間は信用に値しないのか?」
問いかけても反応はない。
アンテルムは自分を騙し、無防備に肌を見せる女に憤り…そして加虐心が湧いた。
チヤの顔に垂れかかった髪をそっとすくう。
「ん、ん…」悩ましい鼻声がチヤから漏れた。
少し苦しげに眉をひそめる表情は扇動的だ。
アンガスが、文句も言わず旅人の面倒を見ることに合点がいった。
チヤがイムのふんを掴んだときは、アンガスは一緒に浴場まで行ったな…。
そうか、アンガスは『女』だと知っていたのか。
アンテルムにとって初めてみる女性の白い肌、そして警戒心が高いこの女は穢れをしらないのだろう。
それを弟が狙っていることはわかった。
「キミが私を騙すから悪いんだよ」
アンテルムはチヤに深く口づけをする。