三人を取り巻く空気
(ティムさんって強いんだっけ?)
ティムさんに誘われ深い森へ向かったが、足を踏み入れるのは初めてで不安だった。
「少し待ってね」ティムさんは森に入ろうとしない。
しばらくすると森の獣道からアンテルムさんが出てきて、ティムさんが探索に誘った。
「アンテルム、ゲーナの森の見回りも終わりだよね?探索に付き合ってよ」
「ああ、付き合う」
ティムさんはアンテルムさんがこの時間に仕事を終えるのを知っていたのか。タイミングがよい。
*
獣を倒しながら突き進んでいく。二人は会話をする余裕があるようだ。
「ティム兄さんは斧を使うのか」
「うん、新しい
ティムさんが言い終わると同時に一撃を食らった獣が消滅する。
「私は大人だ。"おもちゃ"なんて欲しがらない」
「そうかな?僕たち兄弟…本質は似てるからね」
ふふっと笑うティムさんを怪訝そうにみるアンテルムさん。
「斧じゃ騎兵志願トーナメントを勝ち進めないぞ」
「いいんだ。アンガスの手助けだし。ずるい子を倒すために僕はいるだけだよ」
「……」アンテルムさんは握りしめた銃に目を落とし、何も答えない。
ティムさんの真意が掴めない私はアンテルムさんに質問を投げた。
「アンテルムさん、どうして剣をやめてしまったのですか?」
「欲しい物を手に入れるには、手段を問わないことにした」
出会ってからのアンテルムさんの声はずっと優しかったが、初めて聞く冷たい声。これ以上は何も聞けるような雰囲気ではない。
「面倒なことになっちゃったね」場にそぐわないあっけらかんとしたティムさんの声。
森を出るとアンガスさんが待っていた。
「チヤ!…っと、珍しい組み合わせだな…」
律儀にも迎えに来てくれたらしいが、森を後にする空気がどこか重く感じる。