三すくみ
私は朝からアンガスさんと深い森へ探索へ出かけていた。実は二人で探索するのは初めてだったが、不安はない。アンガスさんの剣さばきは先日の試合と同じように、確かなものだった。
「チヤ、先日は兄貴たちとどんな話を?」
「ティムさんが斧でトーナメントに出場していることと…」
アンガスさんが何かに気が付いて、ははっと笑う。
「それでオレの試合がやりやすいわけか…
チヤ、武器には相性があって剣は銃に弱いんだ。銃は斧に弱い。斧は剣に弱い。三すくみの関係だ。だからティム兄さんは俺が銃を使う対戦者とかち合わないように手をまわしてたことになる」
「なるほど、なぜそこまでしてアンガスさんを勝たせようと思ってるんでしょうね」
「さぁね」と興味なさそうに返事をする割にはどこか嬉しそうに笑みを浮かべるアンガスさん。
「それと、アンテルムさんが銃に武器を持ち替えたことも話しました」
アンガスさんの顔が一瞬、険しくなる。
「ふーん、騎士に誇りを持ってる兄貴がね…」
「銃を使って試合にでるなら他の騎士に勝つのは確実ですよね」
ふとアンテルムさんの声が頭の中をこだまする。
──『欲しい物を手に入れるには、手段を問わないことにした』
「騎士隊長になって家を出るつもりなんだろう」
(家を出れば欲しい物が手に入る?)
アンガスさんはこれ以上何も話さなかった。
ただひたすら目の前の敵を夢中で斬っていた。