【アンガス視点】星の日
【アンガス視点】
チヤに着せたドレスは似合っていてすごく綺麗だった。
エナの子コンテストなんて俗なものは放って、今すぐ抱きたいと頭の中でいっぱいだった。
ドレスを着せたばかりなのに脱がせたい。
髪を整えたのに今すぐ乱れさせたい。
オレの中で相反する気持ちが複雑に絡み合う。
チヤの反応がみたくて、髪を結いながらわざとらしく首筋や耳に触れたりもした。背後からだと表情は見えないが耳が赤くなるのがわかって愛おしく感じる。
オレの手でいつか、チヤのすべてを──。
ま、恋仲にもなっていないのに実際にそんなことしたら、チヤとの関係は二度と修復できないだろうから理性をフル稼働させたけど。
彼女のために願いのバラを差し出した。キミが心の底から安らぐ日がくるように…。
*
エナの子コンテストが始まり、チヤの自己紹介(と言っても『よろしくお願いします』だけの一言)は複雑な表情をしていた。
頬を朱に染めて、目は潤んで困ったよう表情。だが、それは逆に扇動的だった。会場がざわついたのも、チヤの表情に気がついた
『オレの友人』と紹介すれば、いつかチヤが移住したときに周囲を牽制できると思ったが、失敗したかもしれない。
ふだんは警戒心が高く、目もあわせてくれないが、オレはチヤの魅力を知っている。なぜ、ふと見せる表情が儚げで美しいのか。彼女は人を魅了する【エナのほほえみ】を持っているからだろう。
コンテストが終わり、話しかけてくる女たちを掻い潜っていたら遅くなった。チヤと待ち合わせを約束した温室には誰もいない。
足元には『願いのバラ』の花びらが散っていた……。