確信
移住して数日。
ヤーノ市場で買い物をしているとアンテルムさんがやってきた。
「困ってることはないか?」
「はい、大丈夫です」
「それは?」
「種です。探索もいいのですが、一人だと息が上がりやすくて…畑仕事から体力づくりをしようかなと」
「まだよく眠れないのか?」
「はい…」
アンテルムさんは何も言わず頭をぽんぽんと撫でた。
「もうすぐ試合がはじまるが、よかったら応援に来てほしい。ま、銃をやめるつもりはないが」
「あとで応援に行きますね、武器、参考にします」
闘技場では今年初の試合が行われていた。アンテルムさんは銃ですばやく相手をダウンさせる。躊躇いのない、冷徹な一撃。
正直なところ、騎士のトーナメントなのに銃を持ち出すことに違和感がある。しかし、実力の世界なのだ。アンテルムさんの考えがあってのこと。私は何も言えない。
闘技場を後にすると女性に呼び止められた。
「あなたが移住者のイザナさんね」
人の少ないところで話をしたいと連れられたのは、夕刻のナトルの学舎だった。到着するなり、肩を押されよろめく。
「あなた、アンテルムとアンガスを手玉にとるなんてやるわね。どういう手を使ったのよ」
「手玉って……」
「天然なの?余計たちが悪いわね。とにかく、私とアンガスは付き合ってるの。わかるでしょ?この前も抱き合ったんだから」
「はぁ…」自分の置かれた状況とアンガスさんの恋人と名乗る人の前で間抜けな声を出すしかなかった。
「もうアンガスに近づかないでって言ってるの!!」
「はい」
「あら、素直ね。わかればいいのよ」
女性は満足したのかナトルの学舎をあとにした。
そうだよね、髪の毛が結えるのもすべて彼女のため。ずきりと胸が痛む。
はっきり言葉にできなかったけど、確信する。
私は"アンガスさんが好き"。
アンガスさんの綺麗な顔も、甘い声も……
突然見せる真剣な眼差しも……香水の匂いも。
私に夢を見させてくれたことも、すべて好きになっていた。
アンガスさんといると過去から開放してくれるんじゃないかと期待してしまう自分がいる。
でも私は…物珍しい
ばかみたい。