関係
ベッドに横になる。
アンガスさんを好きだと口に出してしまったけど、本来は付き合うこともできない。
……どうしたらいいんだろう。
何度か寝返りをうっては考えることを止められず、なかなか寝付けない。
── カタン。
夜の3刻に差し掛かるところだった。玄関の向こうで物音がする。
── 誰?
枕元に隠した短剣を構えて、静かに玄関の戸の前に立つ。
誰かが、戸の向こうにいる。
まさか
思い切り戸を開け、その人を押し倒すようにして首下に短剣を突きつけた。
「痛…まって…」
目の前にいたのはアンガスさんだった。
「びっくりした。チヤに押し倒されるとは思わなかったよ、嬉しいけど」
こんなときでも軽口をたたくアンガスさんに安心する。
「ごめんなさい、てっきり…」私はアンガスさんに詫びて慌てて立ち上がった。
「
「はい」
「まだ安心して眠れないんだね」
「…」
「あ、これ…こっそり置いていこうと思ったんだ」
渡されたのは、正真正銘のウィムの香水。
「どんなときもオレを思い出してよ」
── え?
気がついたらアンガスさんに抱きしめられていた。
「次の試合、兄貴となんだ。チヤと兄貴の関係はともかくとして、オレはチヤが欲しい。今はこんな言い方しかできなくてごめん。まだこの感情を伝える資格がないんだ。兄貴に勝たないと…」
抱きしめられた体勢でアンガスさんの顔は見えないけど、小さく震えているのがわかる。
「…オレを応援してくれないか」
私は何も言わず、アンガスさんの背中にゆっくりと手を回す。二人の間に決定的な言葉はないけど、たぶん想っていることは同じ。言葉にするには、アンガスさんを信じるしかない。
しばらくして、そっと身体が離れる。
「このままいると帰れなくなるからもう行くね、顔が見られてよかった」
アンガスさんはウィムの香水を自分の手首に吹きかけてから私の首筋を撫でる。
「おやすみ、チヤ」
「おやすみなさい…」
*
再びベッドに横になる。
柔らかいアンガスさんの匂いを胸いっぱいに吸い込んでゆっくり目を閉じた。香水なのに、まるでアンガスさんに抱かれているみたいな夢見心地。私は