39代目:ヒースコートとファナの様子。
39代目のファナ。「友人を1000人作ろう」の実績に四苦八苦し、いろんな人と仲良くなりすぎてよくわからなくなっていたところに、不思議系男子が目の前に現れた!そして貴重なあのセリフを言ってくれたので、記録する。もちろん都合の良い妄想だ!!苦手な人は今すぐタブを閉じるんじゃ。
//ヒースコート視点
私の名前はヒースコート。性格はおしゃべり。
一匹狼の父さん、まさに優等生の兄さん、信心深い兄さんの男ばかりの家庭で育った。
母さんは私が小さい頃に亡くなったので記憶はないが、周囲に恵まれていたので悲しいとか寂しい思いはなかった。
学校生活は友人とほどほどに遊び、成績は真ん中あたりをウロウロ。
普通の男といえば聞こえは良いが、まぁぱっとしない。
そんな学校生活の中で、いつもたくさんの友人に囲まれて中心となっている子がいた。
ひとつ下のファナさんだ。
なにやら目標は”友人1000人”らしいが、エルネア国民は400人ちょっとしかいない。
どうする気だろう?
授業が終われば彼女は、友人たちと探索に採取に遊びに忙しそうにしている。
そんな様子を遠巻きに見ている私は、ファナさんにに声をかけられていない。
知人にすらなっていない。
すれ違いざまに目は合うし、私はおしゃべりな性格だから割と目立っているつもりだが…だからって私から声をかけるにも、あの人混m…輪に飛び込む勇気はない。
//ファナ視点
わたしの名前はファナ。性格は優柔不断。
お人好しのお父さん、せっかちなお母さん、弟は求道者と一匹狼の二人。
5人家族で郊外の邸宅で暮らし。
友人を1000人作るとメダルがもらえるらしいので頑張っているところ。
おかげさまでゴシップ掲示板の人気者に入ったし、成人したらモテクイーンも約束されている。
(よし、これで学校の子とは全員、仲良くなったかな?)
いや…緑髪の可愛い顔した男の子とまだ友達になってないわ…えーっと誰だっけ?まぁいいや、あとで会いに行こう。
このあとの予定がぎっちり詰まってるのよね。友人を作りすぎても大変だわ…
そうこうしているうちに、彼は成人してしまって会えずじまい。
*
わたしもあと少しで成人。
そしたら同級生の中から恋人を作るのか…
全員、かっこいい…けど何か違うような気もする。友人として長く過ごしてしまったがゆえの弊害なのかも。皆、同じようにみえてちょっとね…なんて上から目線すぎる?
ふと、お父さんとお母さんの顔を思い浮かべる。
お父さんはお母さんよりも年下で、お母さんがお父さんにベタ惚れだそう。
王族らしく丁寧で、お人好しな性格も相まって物腰が柔らかいお父さん。
うーん、付き合う相手じゃ退屈そうだ。ぶんぶんと首を振る。
こうなったら同級生は諦めて色気のある大人の男性と付き合いたいわ。
そうね、例えば王配の遊び好きなおじさま…モイセスさんのような。
モイセスさんはお城にいけば声をかけてくれる。わたしがモイセスさんのところのお子さんと仲がよいからだろうけど。
性格は遊び好きだし綺麗な顔してるから、きっと若い頃はブイブイ言わせてたに違いにないわ。それでいて奥ゆかしい王女と結婚するなんて…きゃー!いやらしい!!
まぁ、そんな妄想はさておき…年上男性と恋愛したいなって思ってた。
そしてちょうどよく目の前に現れたのが彼。こびない性格のナイジェルさん。
わたしよりもふたつ上で、絵本で読んだことがある遠い国の王子様に似てるの。
「わたしが大きくなったらお嫁さんになってあげてもいいよ」
「うーん…じゃ、すてきな大人になったらね」
なんか歯切れが悪いのが気になるけど、これで将来も約束されたものね。
ウキウキで帰路につくと、学生時代に声をかけられなかった緑髪の男の子がいた。
「友達になろう!」「大きくなったらご飯に行こう!」
わたしは矢継ぎ早に声をかけた。これは友人を作るための反射だ。
//ヒースコート視点
私は目の前の女の子に圧倒されていた。
「びっくりした!落ち着いて、うんうん…友達になろう」
女の子は「やった」と小さい声をあげ、ノートをひらいてチェックを入れていた。友人リストだろうか?ふと意地悪な質問をしたくなる。
「私はファナさんの何番目の友人かな?」
「58番目」
「うーん、ここでも真ん中だ。ぱっとしないな」
「ぱっとしないって?」
「まぁ可もなく不可もなく普通の男だなって」
「誰かの特別になりたいの?じゃ、わたしが大きくなったらお嫁さんになってあげてもいいよ」
な…なんだこの女の子…。だけど…ちょっとドキッとしてしまった。
男家庭に育った影響だろう、女慣れしてない私は「お、おう……大人になったらよろしくね」と裏返った声で返すのが精一杯だった。
*
私は兄さんたちに相談した。
「というわけで、ファナという子と結婚の約束をしたんだ」
「いやいや、それは社交辞令だよ」
「あの子、友人多いから忘れるって。オレも友人だと思ってたのにリストからあぶれてたのか他人行儀になってたよ」
兄たちからのアドバイスは散々だった。
*
今日、彼女が成人する。
彼女が城からでてきたので声をかけようとしたら、真っ先に声をかけたのはナイジェルさんという男だった。
私の童顔とは正反対で大人な雰囲気をまとっている。
私の兄たちもそうだ。色気があって…私は末っ子です!という顔をしている。コンプレックスを刺激されてむかむかしてきた。
「ファナさん 成人おめでとう!その、二人でどっか行かない?」
気がついたら彼女を呼び止めていた。
その足で幸運の塔へ向かい、告白をしたが玉砕した。
失うものはない。58番目なりの意地を見せよう。明日も告白をするぞ!
//ファナ視点
ナイジェルさんに告白されて付き合ったけど嬉しくなかった。
物語に出てくる王子様に似てるし、かっこいいんだけど…なんか違う。
わたしは彼からのキスもデートも拒んで何がしたいんだろう。
そのかわり、毎日毎日凝りもせず会いに来るヒースコート君が気になっている。
採取や釣りなど他のことも誘えばいいのに、必ずデートに誘ってフラれる。
猪突猛進というか無謀というか。
顔も可愛い系でタイプじゃないのに…
日に日にわたしの中で存在が大きくなる。
「上の空でどうしたの?キミが付き合いたいっていうから今こうしてるのに」
目の前にいるナイジェルさんが不満げに声をかける。
「別れましょう」
「自分勝手だよ」
友人リストからひとり名前が消える。
「ごめんなさい…」
その場で立ち尽くしていると背後から声をかけられた。
「ファナさん、私じゃダメかな?私はファナさんの特別な人になりたい」
「わたし友人リストを埋めることばかり考えて、ちゃんと人と向き合ってなくて…好きって意味がわからなくなってて…こんな状態でよければ付き合ってください」
「嫌だったら別れてもいいから、焦らずに過ごそう」
//ヒースコート視点
彼女は弱っていた。毎日、いつでもどこでも同級生の男や女友達…小さい子から声をかけられて疲れていたのだ。
「今はヒースコート君がリストの一番だ」
「そりゃ恋人だからね、でも実際どう?付き合ってみて」
「一緒にいるとほっとする。でもヒースコート君、会いに来ない日もあるのどうして?」
「え、他の人に連れて行かれるから…たまには私とじゃなくて友人と過ごしたいときもあるかなーって」
「そんなことないよ、もっと一緒に過ごしたい」
「女慣れしてなくてごめん。えーっと、じゃ…そのキスしたい」
「!!」
「嫌?」
「それを聞くのはずるいなーって」
(女心って難しいな)
と言いつつ、彼女は目をつむっている。
私は彼女を抱き寄せ、そっと口づけをした。
//ファナ視点
ヒースコート君の癒やし効果はなんだろう…
考えた結果、お父さんと同じ「私」男子の物腰の柔らかさだということに気がついた。
でも、ふと天然の”男らしさ”が垣間見えたときに極上のドキドキが味わえる。
学校生活でもあえて仲良くしなかったのも良かった点のひとつ。
あの時代から友人リストのひとりのままだったら多数に埋もれて、なんの印象も残らなかったと思う。
*
そして成人してから28日、わたしはこうして神殿でドレスを着て立っている。
隣にはヒースコート君。
みんなから祝福されて、この上なく幸せ。というか神殿から人が溢れるくらいの参列者…
ヒースコート君に目をやると困った顔して笑っている。
「ファナさん、相変わらずの人気者だね」
「もう、やみくもに友達は作りません…」
「私もファナさんを目の前で誰かに連れ去られるのは嫌なので…はい」
そう言って手を差し出すヒースコート君。
「ファナさん、私たちの家に帰ろう」
わたしは彼の手を取り、神殿を後にした。