陛下と王妃
波止場からエルネア城に向かう途中、女性にウインクしたりキスをせがまれたり
ティナ「アーちゃん、くすぐったいです」
アンガス「くすぐったく感じるなんて子供だな、もしかして社交ダンスやキスもまだなのか?」
ティナ「ダンスはお兄様と練習しました。それに口づけは愛する人とするものです!」
アンガス「うわ、お嬢様に育っちゃったよ。一緒に風呂に入った仲なのに」
ティナ「婚前に男性と湯浴みを共にするなんてことはありえません!」
アンガス「一緒に入ったよ。だってティナはオレを王女だと思ってたし、何よりエルネアは混浴だからな」
ティナ「そうでした……」
ころころと表情が変わるティナにアンガスは笑った。
*
アンガス「にしても、デューイさんだっけ。突然、エルネアに来たかと思えば朝から晩まで探索ばかりだよ」
ティナ「お兄様……元気そうでよかった」
どうやら兄デューイの使いというのは、希少な鉱物の調査だったようでしばらくエルネアに滞在するらしい。そうこう話しているうちに懐かしいエルネア城が見えてきた。
アンガスが居室の扉を開ける。
エルネアの王家の居室はしっかりしたレンガの造りで、控えめながらも上品な装飾がされていた。
アンガス「おやじ、おふくろ。ティナを連れてきた」
アンガスの視線の先には、大きな窓のそばに豪華なソファセットが置かれている。そこに立派ないでたちの男女がゆったりと腰を下ろしていた。
ティナ「オスキツ陛下、ヴィクトリア王妃……ご無沙汰しております」
ティナは二人の前で淑女の礼をする。
オスキツ「すっかり
ヴィクトリア「まぁ、ティナ!可愛いらしく育って。あら、アンガスも一緒なの?アンガスに悪いことされてない?」
アンガス「ひと聞きが悪いな」
ティナ「ふふ、大丈夫です」
ヴィクトリア「何かあったらアタシに言うのよ?そうそうテレーゼが出産したの!よかったら会いに行ってあげて」
ティナ「そうなんですね!」
──オスキツ陛下とヴィクトリア王妃に待望の孫が生まれた。それは未来の王でもある。