アンガス派?ティム派?
アーちゃんに案内されてテレーゼ様の邸宅……とは言い難い、普通の集合住宅に到着する。
ティナ「噴水通りにご自宅が?」
アンガス「そう、姉貴は好きでここに住んでる」
テレーゼ様は、城下町に降り国民の暮らしぶりを見て、彼らの考えや意見に耳を傾けているという。
質素な扉をあけると、テレーゼ様とそのとなりに旦那様であるアイヴァン様。
ティナ「テレーゼ様、ご無沙汰しております。そしてアイヴァン様、便りでお名前は存じておりました。お初にお目にかかります」
アイヴァン「堅苦しいのはやめてほしいな、アイヴァンでいいよ」
誠実そうな笑顔に緊張が溶ける。
テレーゼ「ティナ、うちの息子の結婚相手にどう?あなたなら歓迎よ」
ティナ「……ということはご子息なんですね!!抱っこしてもよろしいでしょうか?」
テレーゼ「ええ、そうしてちょうだい」
赤ちゃんをそっと抱っこすると、きゃっきゃと上機嫌に微笑んだ。ほのかにミルクの香りがする、ぷにぷにと柔らかい肌。
(ん~~可愛いっ!)
*
ティナ「アーちゃん、ご案内ありがとうございます」
酒場の二階、宿泊する部屋の前で頭をぺこりと下げる。
アンガス「本当にここに泊まるの?オレ、邸宅の鍵あるけど」
ティナ「はい、こちらの部屋のほうが”旅”の雰囲気があります。わたくしには邸宅は広すぎますし、かと言ってお兄様が借りてる噴水通りの部屋は荷物が多くてお仕事の邪魔になりますから……」
アンガス「オレと邸宅で暮らs」
ティナ「そうだ、アーちゃん!ティム様はどこにいますか?」
アンガス「え?ああ、図書室にいると思うけど」
ティナ「ティム様に会いたくて」
アンガス「えーティム派なの?オレのほうがいいって」
ティナ「?」
小首をかしげていると、くらりとする甘い香りが顔を横切って頬に熱を帯びた。軽い口づけをされたのだ。
アンガス「おやすみ、ティナ。明日、迎えに行くからね」
ティナ「そ、そういうのは好きな人にしてください!」
アンガスは『はいはい』と手をひらひらとさせて階段を降りて行った。