再会
ティナを助けたのは第二王子の『アンテルム・ブヴァール』
長身で鍛えた身体に、
繊細な第一王子のティム、女好きで享楽的な第三王子のアンガスとも違う、信心深い性格で硬派がゆえ隠れた女性ファンは多いが、近寄りがたい雰囲気を持っている。
主席で学業を終えてからは、騎士道一本で生きてきた。日課は、限られたものしか踏み入れることができない、瘴気の森をまわることだ。
そんなアンテルムが瘴気の森の入口付近で、何かを取り囲むように魔獣の群れを発見した。その”何か”が女性だと気がつくのに時間はかからなかった。
アンテルム「今助ける!!」
走り出すと同時に腰の剣を引き抜き、一瞬とも言えるハヤサで魔獣を斬り倒す。
女性の元へ駆けつけると、気を失う直前の女性が口にしたのは「怖い」の一言だった。
アンテルム「私は女性を怖がらせてしまったのか」
ぽつりとつぶやく。
『怖い』というのは女性の身に起きた出来事であって、決してアンテルム自身のことではないのは
真面目過ぎる性格がゆえに、そのような発想をしてしまうのだ。
抱きかかえた女性を安全な場所に下ろし、応急処置をこなす。
(どうやら傷は浅い。しかし鍛えていないから、罠だけでも気を失うほどの痛みだったのだろう)
どこの子だ?連絡がとれる家族は……ふと彼女が手紙を手に握っていることに気が付いた。
(この手紙は──!)
夢中で手当を行い、今まで気が付かなかったが、そこには幼い頃に出会って恋をした女の子『ティナ』がいた。
<アンテルムの回想>
ティナ「アーちゃん、お人形遊びしましょ?」
アンガス「いいよ。でも人形遊びが終わったらオレ…アタシとお風呂に入って、そして一緒のベッドで寝よ」
ティナ「うんっ」
思えばアンガスはあの頃からエロガキ根性が発動していた。
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ティナ「ティム様、今日も外国の本を読んでください」
ティム「いいよ、隣においで。アンテルム君もおいで。アーちゃんは?」
アンガス「興味なーい!」
私は兄ティムを間にして、ティナさんの天使のような愛らしい姿を横目で見ていた。
ティナ「この外国のドレス、とても素敵ですわ」
ティム「そうだね、ティナちゃんが大きくなったら似合うだろうね」
ティナさんは特に外国の話が好きなようで、私はいつしか本ではなく、自分の目で見たものを彼女に伝えたいと、文武ともに実力をつけ父の仕事についていくようになった。
──文通はそこからはじまった。
その手紙がきっかけでエルネアに来てくれたことなら、飛び上がるほど嬉しいことだ。
アンテルムは治療を終えたティナを抱きかかえて、デューイの家に向かった。