その手に触れられて
ティナ「送っていただきありがとうございます」
アンテルム「構わない。それと薬を作ってきた。塗れば傷跡も目立たなくなるだろう」
ティナ「そんな!ご迷惑をかけたのにこれ以上のことは……」
アンテルム「自分の傷にも使う分を多く作り過ぎたんだ。だから遠慮しなくていい」
本当は希少な薬草を調合したものだったが、そんなことを言ったらティナが受け取らないのはわかっていた。この子はそういう子だ。
ティナ「そういう事でしたら、ありがたく頂きますね」
ティナさんは薬の小瓶を受け取り、
アンテルム「どうした?」
ティナ「アンテルム様……無知でごめんなさい。こちら、どれくらいの量を塗れば良いのでしょう」
アンテルム「ああ、気が利かなかった。すまないが、ベッドに腰掛けてくれ」
*
ティナは言われるがままベッドに腰掛けると、アンテルムが床にひざまずき、少量の薬を手のひらに伸ばした。
アンテルム「足を出してくれ、薬が塗れない」
ティナ「えっ……」
(夜も遅く、男性と部屋で二人きり。しかも生足を見せるなんて!)
対して一切表情を変えないアンテルム。まるで自分のほうが想像豊かで
──アンテルム様に他意はありませんわ!
ティナ「こ、こうですか!?」
アンテルムは、差し出されたティナの脚に丁寧に薬を塗っていく。普段は剣を握っているとは思えないほどの、優雅で優しいアンテルムの仕草。
アンテルム「できれば揉みほぐす感じで塗るといい。今日、階段を上っていたときにかばっていただろう」
ティナ「っ……はい……」
肌の上を大きく熱い手が這うだけで、ティナはその感覚に震えた。微かな衣擦れの音がどこか官能的だ。
*
ティナ「っ…んっ……気持ちいいです」
甘い吐息混じりの声にアンテルムの手が止まった。
アンテルム「!……すまない……こんな遅くまで」
ティナ「いいえ!!わたくしはアンテルム様に、感謝しかありません」
アンテルム「薬の量はもう理解しただろう、私はここで失礼する」
ティナ「はい……」