いつもの男
宿屋までの帰路をアンガスさんと歩いていた。
「僕がいつから女だと気が付いていたんですか」
「初めて会った日からだよ、女の子って匂いでわかるんだよねー」
得意げに話すアンガスさん。
まさか初対面で女だと気が付くとは…その特技は騎士になる上で役に立つのだろうか。
「はぁ…そうですか。
あ、そういえばずっと言えていなかったことを」
「ん、愛の告白?」
「いえ、花束ありがとうございました」
「あー、似合うと思ってね」
「そのセリフ、誰にでも言ってそうですよね」
「嘘は言わないよ、チヤはあの花が似合う日がくると思ってる」
意味がわからないが、アンガスさんなりの褒め言葉なんだろう。
宿屋に到着する。
「送っていただきありがとうございました。また明日からいつも通りでお願いします」
「うん、甘美だね。二人だけのひ・み・つ」
私が女だとはっきりわかった瞬間これだ。ばっちり享楽的な生き方が染みついていている。
「おやすみなさい」
「ちゃんと眠れてる?添い寝しようか」
じりじりとベッドにおいつめられる。
「結構です…」
「残念。あ、最後に…オレはチヤの案内役をやめるつもりないからね」
ウィンクするアンガスさんからキラキラという効果音が聞こえそう。
アンガスさんは本当に騎士になれるのだろうか?