王子の第六感
「はい、チヤ君。噴水通りの家の鍵だよ」
ティムさんから噴水通りの家の鍵を手渡された。
「僕にですか?…どういうことでしょう」
「んーアンガスが騎士になったらこの国に残ってくれないの?」
『ねぇ、オレが騎士になったらこの国に残ってよ』アンガスさんの真剣な眼差しと言葉が脳裏を横切る。
なぜその話をティムさんが知っているのか。
「あ!じゃなくて、資金を貯めるのに宿屋じゃ不便でしょ?」
どこかわざとらしいくらいの訂正。
「そうですね、外食ばかりでお金がかかります」
「噴水通りならキッチンもあるし、
いろいろ?引っかかる言葉を散りばめるティムさん。
「ありがたいのですが、今は賃料も惜しくて」
「アンガスが出世払いしたんだよ」
「アンガスさんが?」
「ここ、アンガスが用意してくれた家なんだ。怪しまれるから僕から鍵を渡してって頼まれたの」
(それは秘密にすべき男同士の会話だったのでは?)
だが、ティムさんは意に介していない様子だ。
「そうですか…タイミングをみてアンガスさんにお礼をいいます」
「うん、喜ぶと思うよ」ティムさんはニコニコしている。
ティムさんは『つかみどころがない人』というと語弊があるかもしれないが、警戒心を持たせない不思議なオーラを持っている。
「僕はね、小さい頃から勘がいいんだ。これからも『君たち』の味方でいるつもりだよ」
言いたいことをいって満足したのかティムさんは宿屋を後にした。