ドレス
今日は年に1度、太陽が登らないことから「星の日」と呼ばれている。街には幻想的な光が飛び交っていた。
(光の花みっけ)
星の日だけに咲くこの不思議な花はお守りにもなる。
「チヤ、おはよう」
「アンガスさん、おはようございます」
「ワフ虫の光がきれいだね」
「そうですね」ふと空を見上げる。
ワフ虫はこの時期になるとプルトをはじめ、旅をした大抵の国には現れていた。本当のところいうと、新鮮さはない。
「もっといいものを見せてあげるよ、ついてきて」アンガスさんが私の手をとる。
*
─ ガチャリ。温室に鍵がかけられた。
「さてと、脱いで」
「えっ…」
「顔を赤くして何を想像してるのかな?はい、これに着替えて」
差し出されたのは大きな箱で、ふたを開けると豪華絢爛なドレス。
「これは?」
「オレと一緒にエナの子コンテストに出てよ」
──『エナの子コンテスト』
旅をしたプルトでは美男美女を決めるコンテストだった。あんなに目立つものに出場するなんて有り得ない!
「目立つのは嫌です」
「オレが騎士になれなかったら国を出るんでしょ。なら思い出をくれない?」
騎士になるのは嘘だったのですか?と言いかけたが、それじゃ私が期待しているみたいで恥ずかしい。
「わかりました、目立つことはこれっきりです」
「よかった。着替え、手伝おうか?」
「二度も着替えを手伝ってもらわなくて結構です」
「二度?」アンガスさんが聞き直すが私は無視して着替えた。彼は背中を向けている。