夢かなう
「ど、どうですか」
ドレスは絹やモフコットンの上級な生地で仕立てられ、滑らかな肌触りだった。
「さすがオレ、寸法はぴったり。すごく綺麗だ…」
じっと見つめられて気恥ずかしくなる。
「そうだな、髪の毛はオレが結ってあげよう。そこに座って」
アンガスさんに背を向ける形で花壇のふちに腰をかける。
髪を触る指先が耳や首筋にふれると、そこが熱を持ったように熱い。
花壇の水路に流れる水音しか聞こえない静寂。まるで、この世界に二人しかいないような錯覚を覚える。
*
「はい、どうぞ」
窓に映った自分を見ると上品なクラシカルヘアにされていた。
(これが私?別人のよう…)
アンガスさんの手によって、こんなにも見違えることに驚きを隠せない。
──と、同時に女性の髪を結えることになぜか胸がざわざわする…
「まだ笑わないね、何がそんなに不安なの?」
「すごく嬉しいのですが。身の丈にあわないなと…」
「チヤの心は難しいもんだな」
ふとアンガスさんの手元に目をやる。
「その手に持っているのはなんですか?」
「願いのバラだよ、花言葉は『夢かなう』。チヤに受け取ってほしい」
差し出されたバラを受け取る。
「さぁ、行こう」