試合を見に行く
「騎士隊に興味があるなら見に来るといい」
私はアンテルムさんの試合に招待された。
(でも、この日はアンガスさんもトーナメント初出場だったような。)
居室を出てきたアンガスさんと目が合い、アンテルムさんも気が付いた。
「アンガスも今日の試合、頑張れよ」
「ああ、兄貴もな」
突然、黄色い声で玉座の間がにぎやかになる。
「アンガス♡試合、応援に行くね♡」
「試合前にデートしよ?♡」
私の応援は間に合ってるみたい。勉強にもなるし現役騎士であるアンテルムさんの試合を見に行こう。
女の子たちに愛想を振りまき、温室に入っていくアンガスさん。
でも、今日はどこか近寄りがたい雰囲気…そう思ったのは私だけじゃなかった。
「アンガスのやつ、機嫌が悪そうだな」
「試合前でピリピリしてるのかもしれませんね」
*
夕方はそわそわした気持ちで王立闘技場に入る。
あれ…若い女の子が多い?
そうか、アンテルムさんはアンガスさんとは違った意味でモテるのね。
信心深く、優等生な王子兼騎士。モテるのも当たり前か。
試合が始まると声援が飛び交う。
(アンテルムさんが勝ちますように、そしてアンガスさんも…)
アンテルムさんはベテランの騎士に勝利し、周囲の歓声がより大きくなった。
「おめでとうございます!」試合を終えたアンテルムさんに駆け寄る。
「応援ありがとう」
「今度一緒に剣を交えてもらえると嬉しいです」
「そうだね」ぽんと肩を叩かれる。
(大きな手だな…きっと一撃一撃がすごいんだろうな)
「お、アンガスだ」
アンテルムさんが試合を終えたアンガスさんを見つける。
「試合、どうだった?」
「勝ったよ、兄貴は?」
「私もだよ」
兄弟の報告を微笑ましく見守る。
「ところでチヤ、今から時間ある?」ふいにアンガスさんから名前を呼ばれた。