グスタフ×ウィルミナ
【グスタフ視点】
「グスタフ君、おはよー!いい天気だねー!」
同級生で仲が良いヴァレリアンの妹、ウィルミナちゃんと家を出たところで鉢合わせる。
「ウィルミナちゃん、おはよ」
「グスタフ君、何してるの?今日はどこ行くの?わたしと遊ぼう!」
おしゃべりな性格の彼女は、怒涛の勢いでぼくに話しかける。
「ぼくは今から森の小道に向かうところだけど、ウィルミナちゃんが遊びたいならそうしようか」
「やったー!グスタフ君、大好き!」
大好き、か。
まだ2歳の彼女はきっとイムムース大好き!と同じレベルで伝えているんだろう。
『家も歳も近いし、二人は結婚すればいいんじゃないかしら』
国王でもあり、ぼくの祖母のテレーゼさんとウィルミナちゃんのお母さん、リザさんがそんな話をしていたことを思い出す。僕の家系と、ウィルミナちゃんのジョルカエフ家は懇意にしているが、その婚約話が本気か冗談かは、わからない。
ちなみに、ぼくの両親は少しの勤勉だけが取り柄のなんとなく地味な父と若い頃は愛嬌だけで乗り切っただろう、享楽的な母だ。だから、ぼくの育ての親は他にいて、帝王学はテレーゼさん、学問は王配アイヴァンさんと親戚のティムさん、武術は騎士隊長のアンテルムさんに教わった。
アンガスさんという親戚もいるけど、話すことといえば女性の気持ちの読み解き方についてだった。どうやら女性の言葉は額面通りに受け取ってはいけないらしい。いつか役に立つのだろうか。とにかく、テレーゼさんが亡くなることはまだ考えたくはないけど恋愛や結婚以前に、両親の代の国のあり方が目先の心配だ。
*
「グスタフ君、牧場は楽しくない?」
ウィルミナちゃんの青く澄んだ瞳がぼくの顔を覗き込む。
「ううん、楽しいよ。でもそろそろ混み始めるから移動しようか」
「わかったー!」
牧場を出るとウィルミナの兄であるヴァレリアンの姿が見えた。
「おにいちゃんが来てるよ」
「本当だ!おーい、おにいちゃん!」
「おや、ウィルミナさんはグスタフと一緒だったんだね」
「うん、デートだよ」
「で…デート…」
2歳に似つかわしくない単語が出てきて、思わず言葉に詰まったが、ウィルミナちゃんのところは5人兄弟。知識があってもおかしくないのだろう。
「グスタフと探索に行こうと思うんだけど」
「わたしも行くー!」
「ゲーナの森だから危ないよ」
「やだ、行く。ママからもらった強い武器あるし平気!」
兄妹のやりとりを見守っていたがこうなることはなんとなくわかっていた。積極的なウィルミナちゃんらしいといえばらしい。
ぼくとヴァレリアンは説得を諦めて、3人で森へと向かった。
*
ぼくとヴァレリアンは学生にしては武術レベルが高い。先制は取りつつ、ウィルミナちゃんも敵にとどめを刺せるように調整した。
「このご時世、女も自分の身は自分で守らないとね」
ぼくらの調整を知ってか知らずか、敵を倒して得意気な彼女。
でも、言っていることは一理あるし、大人びている。
「ぼくは誰かの王子様になりたいから強くなるんだ。兄としてウィルミナさんのことも守ってあげるよ」
対してロマンチストのヴァレリアンらしい発言。
「わたし、おにいちゃんより強くなるもん!ねーね、グスタフ君はおとなしい人が好き?」
突然、話題を振られて驚く。好きなタイプなんて考えたこともない。けど、ぼくにとって女性のロールモデルはテレーゼさんだ。
「ぼくは、自分の意思を持ってる子が好きだよ。おとなしくても、元気でも芯があればどちらでも」
「しん?」
「難しいかな?……おっと敵だ!」
話題はそのまま中途半端に途絶えてしまった。
*
ヴァレリアンはうちに遊びによく来るが、必ずと言っていいほどウィルミナちゃんがついてくる。
「ごめん、今日も妹がついてきちゃった…」
申し訳なさそうなヴァレリアンと、ワクワクした表情のウィルミナちゃんの対比が面白い。
「グスタフ君は何してたの?」
「今日は料理をしてたんだ」
自慢ではないが、料理はそこそこできる。女性の機嫌を良くするには料理スキルも必要だとかどうとか…アンガスさんが教えてくれたのだ。
「へぇ、すごい!!わたしも食べて見たいな」
「今作ってるのはハニームタンだけど…」
「食べる!」
「はい、どうぞ」
一口、口にすると彼女の顔がなんとも言えない顔になった。
「う…すっぱい…」
どれどれとヴァレリアンも口にする。
「いや、美味しいけど?ウィルミナさんはまだ2歳だからね、子供にはわからない味だよ」
「わかるもん…ムタンはファーストキスの味なんだよ!」
「き…キス…」
やはり2歳にしてはマセてる。ぼくは小声でヴァレリアンに指摘したが、ヴァレリアンは(ぼくが教えたわけではない)と否定した。
「えへへ♡ファーストキスだ」
ウィルミナちゃんは、とんちんかんなことを言ってるが満足そうな笑顔をしているので、突っ込むのはよした。
*
「ウィルミナちゃん、ザッハトルテ食べる?」
「えっ、いいの?」
以前作ったハニームタンは酸っぱかっただろうから、今度はあまいケーキを食べさせてあげたかった。
彼女を家に呼んで、一口目を見守る。
「んー!!おいしい…グスタフ君すごい!!天才かも…モテちゃうよ、どうしよう…」
彼女の表情がぱっと明るくなり、(少しずれてるけど)裏表のないストレートな表現は、ぼくにとって癒やされる瞬間でもあった。
「わたしも料理したいなー」
「ジュースだったら簡単だよ」
「よし、今度作ってみるから飲んでね」
「うん、楽しみに待ってるよ」
*
「引っ越しなんて嫌ッ」
朝からお隣さんが騒がしい。様子を伺いに行くと困り果てたウィルさんがいた。
「あ、グスタフ君…うるさくてごめんね」
目の前にはテーブルに突っ伏して不貞腐れたウィルミナちゃん。
「どうしたんですか?」
「来年、僕が騎士隊長になってね。それで引っ越すから…」
「パパが騎士隊長なのは素敵だけど、引っ越したくない……」
「どうして?」
ぼくに何かできることがあればと助け舟を出したつもりが想定してない言葉が返ってきた。
「グスタフ君と離れるのが嫌なの!」
ウィルさんと目が合う。
あー…ウィルさんは理由を知っていたんだ…
「ウィルミナちゃん…学校でも会えるし、ぼくも会いに行くからね」
ちらっと顔をあげて、こちらを見る。
どうやら泣いてはいないようだ。
「約束だよ、キスしたもんね!」
「えっえっ、えっ…」
その後、ウィルさんにどういうことかと問いただされたが本当にキスをしたわけではなく、彼女がハニームタンを食べたときに、キスの味がどうのと言っていたことしか説明はできなかった。
「僕の妻、リザちゃんも勘違いが過ぎるところがあるんだけど…似たのかな」
「そ、そうですか」
「ま、いい子だから許してあげて」
親は子に甘くなるんだなというのを目の当たりにした。
*
「ウィルミナちゃん、3歳のお誕生日おめでとう」
「えへへ、ありがとう。グスタフ君…あのね、これどうぞ!」
彼女の誕生日なのに、数日後に迫るぼくの誕生日のためにプレゼントのジュースを用意してくれたというのだ。
飲んでみると、とても美味しい。
「前に約束したジュースだよね。美味しいよ、ありがとう」
「グスタフ君の誕生日、1日の新年だから忙しいかなと思って。渡せてよかった!」
*
新年の挨拶は玉座の間で行われ、王族であるぼくも立ち会う。
今年は騎士隊長がアンテルムさんではなく、ウィルさんなのでウィルミナちゃんもいる。
「ウィルミナちゃん、新年おめでとう。朝早いのに頑張ったね」
「グスタフ君の誕生日だから…あと新年だから…おめでとうなの…」
まだ眠たいんだろう。どこかぼーっとした様子。
ウィルミナちゃんは朝が苦手だったはずだ。
騎士隊長の家族の参加は任意だから家で休んでてもいいのに。
ふと、お世辞にも勤勉とは言えない性格の彼女が学舎で主席をとっていたことを思い出す。
理由は主席をとれば、ウィアラさんから絵画がもらえるから。
動機はなんであれ、目標には真っ直ぐなんだなと感心する。
「グスタフ君におめでとうって言えてよかった」
「ぼくもウィルミナちゃんにおめでとうって言ってもらえて嬉しいよ」
*
ぼくの尊敬する祖父、アイヴァンさんが危篤だ。王家の居室に駆けつけると家族や親戚が揃っていた。
──夜
皆が見守る中、心配かけまいとアイヴァンさんは安らかに息を引き取った。
テレーゼさんがアイヴァン!と名を呼んだのを最後に、しんと静まり返った居室。
現実のはずなのに現実じゃないような、複雑な感覚が押し寄せてくる。
どれくらい、そこに立ち尽くしていたかわからない。もしかしたらすぐだったのかもしれない。
気がつけばテレーゼさんがテキパキと明日の葬儀について仕切っていた。
それを手伝う両親や親戚たち。
"──王族たるもの、死の淵にあろうと その弱さを隠し 毅然とした態度を崩してはならない"
王族の心得が書かれた本の一節が鎖のように重たくのしかかる。
誰も泣かない、泣けない。
いや、正確にはその場に一人だけ静かに泣いていた子がいた。ウィルミナちゃんだ。
ウィルミナちゃんも、交流があった人を初めて亡くした経験なんだ。
それは、ぼくにとってもそうなのに。
彼女を抱きしめたらぼくも泣けるのかな。そう思って、抱きしめてみたけど、彼女がより声を詰まらせて泣くだけだった。
けど、彼女の悲しみと優しさは充分に伝わって、ぼくが泣くよりもこうして誰かの気持ちを受け止める側に回ったほうが良かったと思えてくる。
「グスタフ君のほうが悲しいのに、わたしがいっぱい泣いてごめんなさい」
「ううん、いいんだ。なんのお礼かうまく説明できないけど、ありがとう」
「?」
「少ししたらまた笑顔で会おうね」
*
【グスタフ視点】
私は成人した。温室で仕事をしているとウィルミナさんが会いに来てくれた。
「グスタフ君、お誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「あのねぇ、グスタフ君には好きな人いるの?」
「別にそういう人はいないけど」
「じゃ、わたしが大人になったらお嫁さんになってあげてもいいよ」
「ウィルミナさんが素敵な大人になったらね」
── 他愛もない子供同士の一時の約束。
*
【グスタフ視点】
それから私には恋人が出来た。
同級生でぶっきらぼうでエナのほほえみの…あれ、なんでこの人と付き合ってるんだっけ?目の前の女は『整形したから綺麗になった*1』どうのって話をしているが、この女の言ってることが頭に入らない。
ウィルミナさんも私に会いに来なくなった。
伯母さんである、マリテさんが亡くなってウィルミナさんの元気がなくなっているのは知っていたが声をかけられないままでいる。
── 星の日。
エナの子コンテストの会場にウィルミナさんがいた。彼女の兄であるウィルザさんも出場していたからだろう。思わず声をかけたが、挨拶以上に言葉が続かなかった。
「ウィルミナさん、こんばんは」
「こんばんは」
先に口を開いたのはウィルミナさん。
「グスタフ君……エナの子コンテスト、残念だったね」
「私は目立つことは嫌だからこれでいいんだ」
「あの、グスタフ君は今付き合ってる人と結婚するの?」
付き合っている人がいるのを知っているということは、ヴァレリアンが伝えたのだろうか。
「それはまだ分からないかな…」
「結婚するかわからないのに付き合うなんて、グスタフ君のほうが意味がわかんないよ!」
彼女はその場を逃げるように去っていった。
*
その年はテレーゼさんが亡くなり、父が国王になった。騎士隊長はウィルさんでもなければ、アンテルムさんでもない。アンガスさんだった。
目まぐるしく状況が変わっているのに、虚しさが心に広がる。
親友の試合を見て、私は鍛えたのに騎士隊に入れるわけでもなく、王になるのを待つだけだ。アイヴァンさんもテレーゼさんもいない。虚しさだけではない、底知れぬ焦りが自分を襲う。
*
【ウィルミナ視点】
「パパ、騎士隊長にならないで」
「ミナちゃん、お城でグスタフ君と一緒になりたくないんだね。本当に後悔しない?」
「どんなパパも好きだから、お願い……」
その日、パパとアンガスさんは人気がないところで話をしていた。
パパは決勝戦でアンガスさんに負けた。
パパありがとう。
*
「こんにちは、もうすぐ成人だね」
「あ、イケメンくん!こんにちは」
(ちょいちょい話しかけてるんだから名前、憶えてほしいんだけどな)
誕生日を迎えてグスタフ君が家に来たけど、話すこともないまま。なんでこんなに気まずくなっちゃったんだろう。
(ママ、相変わらず料理下手だね)
*
【ウィルミナ視点】
今日はわたくしの成人式。
家族に挨拶をする。
「ウィルミナさん、新しい年だね」
イケメンくんが会いに来てくれた。
「えっとレドリーさん?よろしくね」
ウィルおじさんも新年の挨拶にきてくれる。うれしいな。
成人式を終えて、ちょうど温室から出てきたグスタフ君に採取に誘われる。恋人がいるのに誤解されるようなことを……わたくしも勘違いしちゃうよ。
一緒に過ごしてるのに次から次へと女性が会いに来る。わたくしだってグスタフ君と一緒にいたいのに。
採取中に、気持ちを伝えてしまった。
「グスタフ君、付き合ってる人と別れてほしいの。わたくしのほうが最初っから好きだったのに!!」
「……たしかにウィルミナさんとは気が合うよ。けど、それとこれとは話が違う。ウィルミナさんは親友の妹で、私にとっても大事な妹のようにしか思えないんだ」
あっさり失恋してしまった。あーあー泣いちゃうのかな?
二人の間に気まずさが残る。
「ウィルミナちゃん!!」
パパがタイミングよく、わたくしを迎えにきてくれた。
パパと採掘に出かけて、少しだけ気がまぎれる。二ヴの丘で風にあたっているとレドリー君が会いに来てくれた。
「ウィルミナさん、よかったら今度一緒に出かけない?」
「うん、いいよ」
*
あのお誘いがグスタフ君だったらいいのに。
「ウィルミナさん」
── 本物?
「彼女と別れてきた。その…二人でどっかに行かない?」
「ごめんなさい」
「なんで…」
「ごめんなさい!!」
*
「ウィルミナさん?ぼーっとしてるね」
「あ、ううん。なんでもない。ちょっと疲れてるだけ」
「そう、なら休もうか。一緒にいるだけでも僕は楽しいから」
グスタフ君にはまた新しい彼女が出来た。避けていたんだから当たり前だよね。机の引き出しに入っている情念の炎を手に取る。
*
「グスタフ君、今の恋人とも別れて……」
「ウィルミナさん…なんて自分勝手なんだ。どういうつもりで、私にそんなことを」
「ん!?グスタフとミナさんはなんでシリアスになってんの?」
こっちはグスタフ君と関係がめちゃくちゃなのに、一方でお兄ちゃんがおしゃべりな彼女を作っていた。
「なになに、この子がヴァレリアンの妹?きゃー可愛い!!あなたも私と一緒で、おしゃべり?え、大人しそうにみえるし、つーか、今、空気悪くない!?」
「ウィルミナさん、また出直すよ。今度ゆっくり話そう」
*
「ウィルミナさん、ちゃんと食事してる?」
レドリーくんは差し入れにパンをくれた。レドリー君は優しくてかっこよくて、でも…わたくしは……ずるい。
よかった…
レドリーくんが違う子に告白していた。ほっとしてる自分がいる。幸せになってね。グスタフ君のことで気分が滅入ってるときに優しくしてくれてありがとう。
*
アンテルムさんが危篤…だけど、夕4刻まで元気に歩き回って街の人と話していた。こんなに悲しくない危篤は初めてだ。
「ウィルミナさん、ウィルくんによろしく。騎士隊長の座を争って試合をしたのはいい思い出だ。勝率は半々といったところだろうか?いつかガノスで試合ができるのを楽しみにしているよと伝えてくれ」
「パパはまだ死なないもん!!」
「はは、そうだな」
*
【グスタフ視点】
アイヴァンさん、テレーゼさん、そしてアンテルムさん…私の尊敬する人が亡くなり、親友が騎士隊を目指すのを見て焦る。結婚すれば王太子として国民を安心させられる?でも、幼馴染であるウィルミナさんは、私に何度も彼女と別れて欲しいと迫り、私もそれに従ってしまっている。どうかしてる…こんな関係……
≪今年のエナの子コンテスト、選ばれたのはウィルミナ・ジョルカエフ≫
アナウンスで現実に戻る。そうか私もエントリーされていたんだっけな。こんな見世物みたいなイベントは好きじゃないが、大事な収穫祭の祈りを担うんだから仕方ない。
男性のエナの子は赤髪の山岳兵の男か。ウィルミナさんの隣には……胃のあたりがチクりと痛む。
(なんで彼女の隣に立つのは自分がいいと思ったのだ?)
会場を出ようとする彼女を捕まえて、腕を掴む。
「ウィルミナさん、もう避けないで。話をしよう」
「痛いよ、グスタフ君!」
「少し我慢して。話が終わったら解放するから」
「ウィルミナさんのことは妹だと思ってたし、気持ちをぶつけられて正直、戸惑ったよ。当時、付き合ってた彼女ともぎこちなくなり別れた。だからもう一度、私自身と君の気持ちも確認したくて私から告白したよね?」
「……」
「なのに君の答えは私を『そんな風にみてない』だ。……だから私はすぐに別の人と付き合ったんだよ?王族なら将来を見据えた関係の人がいると国民に安心させたいからね。それなのに君はまた同じことをしてくれたよね?二回も彼女と別れてと迫って、君は…!!」
「ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃない。もうこれ以上、気持ちを振り回さないでほしい。私のもとから離れて…」
「嫌だ。離れたくない!」
「こうなった以上、もう妹にも戻れない。こんな関係はおかしい。私も私だ…君に言われたからって付き合ってた人と別れてしまって…」
「グスタフ君はモテるから、それに優しいから、だから近づく女性を情念の炎で…」
「情念の炎を?まさか君は私から仲良しの女友達がいなくなるまで情念の炎を使おうとしたのか?」
「うん」
「……嘘だろ……」
「グスタフ君が振って全女性から嫌われてしまえばいいのに…!!私以外グスタフ君を救う人がいなくなればいいのに…!!うう…」
「わ、わかった」
愛情表現が歪んでる……歪んでるけど胸が痛いほど彼女の気持ちは伝わる。思えば彼女は小さいときから私に好意を向けていた。彼女の気持ちを知らないふりして関係をこじらせたのは私のせいでもある。
私は彼女の気持ちに応えられるのか?
「はぁ……ウィルミナさん……」
「呆れちゃったよね」
「このままじゃ君と私の関係も、そして君の心も壊れちゃう。あと、情念の炎は高価でしょ?破産しちゃうよ。ウィルさんもリザさんも、散財するウィルミナさんを見て悲しむだろうね」
「小さい頃からグスタフ君のことで頭がいっぱいでもう壊れてるし、お金は……」
「……ウィルミナさん、付き合おう」
「へ?このタイミングでな、なな何ですか……??」
「私と付き合うんだ。今から恋人同士だよ」
「ご…ごめんな……」
── 毒をもって毒を制す?
「断るの?私は失恋王だよ。王族なのにほぼ、一生掲示板に晒されるんだ。責任取ってもらわないと困る」
「責任?」
彼女が私を縛り付けるなら私だって ──
「ここ最近の出来事のおかげで女友達も減ってね。結婚できなかったら、私の代で国は亡びるか乗っ取られるだろうね」(弟がいるから平気だけど)
「そんな…」
「授業を聞いてなかったの?よくそれで主席をとれたね」
「グスタフ君……なんだか怖い。優しさ++どうしたの?」
いじめすぎたかな ──
「恋人でしょう?これから、うんと優しくしてあげる。じゃ私はこれから君のお兄さんやご家族に挨拶しなきゃいけないから。また明日ね」
「結局、うちの妹と付き合ったのかよ」
「あとでウィルさんにも挨拶に行くわ」
「よかったのか?ずっと妹のようだって言ってたじゃん」
「彼女は最初から妹のつもりじゃなかった。私はそれに応えてあげるだけだよ」
「グスタフ、なんかキャラ変わったな……闇落ちでもしたのかよ」
「お前だっておしゃべりな彼女を作って、妹と重ねてんじゃないの?シスコン」
Twitterで続く
*1:あまりにもひどい顔パーツの組み合わせでエナのほほえみだったのでコスメした