森の小道でさえも
「本当に来たんですね」
「父、いや国王の命令だからね、女の子とのデートよりも旅人君が優先だよ」
「はぁ…」
アンガスさんの色白の肌が今日は青白くみえるのは気のせいだろうか。
「では、さっそくですが魔獣の森に付き合ってもらえませんか」
「う、マジで?いや、最初は森の小道で…」
アンガスさんは二日酔いの影響で小道に入らず、うずくまっていた。
「うっぷ…オレはここにいるから、先に行ってて。ダメだったらそこらへんにいる幼児に助けを求めてね」
幼児に助けを求めろって…今のアンガスさんは幼児以下じゃないか。
私は彼を置いて森の小道を踏破する。これくらいなら余裕だな、久しぶりの戦闘にわくわくした。
*
「ちょっとアンガスさん、大丈夫ですか?もう僕に付き合わなくて結構ですよ」
「いや、今日は本調子じゃない。明日なら…」
二日酔いでフラフラのアンガスさんに肩を貸して居室まで連れて帰る。
「森の小道にも付き合えないなんて我が息子ながら情けないわ…」アンガスのお母さんヴィクトリアさんが嘆く。
「ほら、飲んで」アンテルムさんがアンガスさんに水を差し出す。
「チヤ君、すまない…小柄な少年に肩を借りるなんて重かったろう?」
「いえ、大丈夫です。僕はここで失礼しますね」
*
ソファを立とうとしたときアンガスさんが私の手を掴み、私と目が合う。
「ごめんね…明日、改めて迎えに行く」
この人は真面目なのか不真面目なのかよくわからないな。