差出人はどちら?
ティナは
その姿が見えなくなると、ベッドに横たわり、先ほどアンテルムが触れた脚に自分の手を重ねる。
アンテルム様にもっと触れてほしいと思ってしまったなんて──
*
ティム「アンテルム君、何かあったの?帰宅してから様子がおかしいけど」
アンテルム「ティナさんの肌に触れることなど、断じて下心ではない!シズニに誓う!」
ティム「僕、そこまで言ってないけど……って、触れちゃったんだね」
アンガス「わかりやすっ」
意味もなくウロウロと歩き回りながらぶつぶつと呟くアンテルムは、まるで落ち着く場所が決まらないイムのようである。
アンテルム「責任をとって今すぐ結婚を……」
アンガス「そんなことしたの!?」
アンテルム「治療のつもりが……目の前にいる女性が初恋の相手だと意識してからは、邪念がよぎり自己嫌悪しかない……」
アンガス「なんだよ、そんな程度かよ」
ティム「そのティナちゃんがさ、この国に来た理由だけど……やっぱりアンテルム君の手紙がきっかけなんだよね」
アンガス「え、文通してたの?乳白色の玉で音声と映像を記録できるじゃん」
アンテルム「そんな貴重な遺物を私的な理由で使いたくない。私の言葉で綴りたかったのだ」
ティム「ティナちゃん、手紙を失くして困ってるよ。アンテルム君が持ってるんでしょう?早く名乗ったほうがいいよ」
アンテルム「しかし、今さらどんなつもりで手紙の相手が私だと伝えればいいのか」
アンガス「じれってーな」
*
ティナはベッドで手紙を読み返していた。
手紙には、ジャラーム国やワ国へ行ったこと──どれも目を瞑れば情景が広がる描写で冒険の追体験ができる。
それも、あるときはお菓子やお花、ティナに似合う愛らしい装飾品を添えて。
中にはティナが妙齢を迎える頃には、甘い言葉も綴られていた。
ティムでなければ、アンガスかアンテルムが手紙を出したことになる。
(こんな甘い言葉が似合いそうなのはアーちゃんだけども……アンテルム様のあの顔からこんな言葉が?)
首をぶんぶんとふる。
『手紙をくださったのはあなたですか?』
いまさら二人に聞くのも不自然で、どうするか考えているうちにティナは眠りに落ちた。